12月22日、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんのYouTubeチャンネル「ピース又吉直樹【渦】公式チャンネル」では、お笑いコンビ・EXITの兼近大樹さんのデビュー小説『むき出し』(文藝春秋)について語る動画を公開。小説家の又吉さんらしい分析が注目を集めています。
(画像:時事)
■「重層的なんですよね」兼近の小説を芥川賞作家・又吉が独自目線でレビュー
兼近さんの『むき出し』は、主人公・石山が、不良からいかにして芸人の道へ進んでいくのかを描いた小説。又吉さんは「もう3回ぐらい読んだ」とのこと。
不良だった主人公が芸人を目指すというストーリーについて、「周りに不良と思われてたら、不良でいる自分が当たり前やって信じ込んでしまったら、そこから違うことをやるのって結構ムズいんですよね」「そこからどういう気持ちでそこに至ったのかっていうのが、割とちゃんと克明に書かれてて、良い小説やなっていう風に思いましたね」と評価します。
また、『むき出し』は「文章も面白いんですよ」と又吉さん。
「石山の幼少期の頃のエピソードもちゃんと笑えるように書かれて」いるそう。
決してエピソードそのものだけに頼るのではなく、「文章としての読み物、読み物としての形にちゃんと落とし込んでる」「しゃべり言葉をそのまましゃべり言葉として書いてるんじゃなくて、文章上の話し言葉として落とし込んでたり」と文体を評価。
さらに、主人公が芸人としてラジオ出演している場面では、「もう全然、それまでの語りとは違うテンポとワードで重ねていくんですけど、めっちゃリズムあって」と、それまでの語り口とは変化をつけていると言います。
また「語り手の、なんやろ、いろんなことを考えてる時の思考の流れみたいなやつは、またいろんな葛藤を重ねていく」と、ここでもさらに語り口を変えているそう。
又吉さんは、「3つくらいの文章をちゃんと意識的に書き分けて組み合わせてて、重層的なんですよね」「それが読み物としても面白い」と、兼近さんの紡ぐ文章の魅力を絶賛します。
■又吉、兼近の覚悟を称える「なかなか書けない」
『むき出し』は、多くの人に読まれることにより「議論が巻き起こると思うんですよ」と又吉さん。
「兼近じゃなくて、この(主人公の)石山(について)は『どう思う?』みたいな。『これでいいんか』っていう、必要な議論を起こすような小説にもなってる」と、小説の影響力についてもコメント。
又吉さんは、「そういう意味で僕はやっぱ、覚悟があるし、純粋やなぁとも思ったし、いいなぁと思ったんですよね小説として」と、兼近さんの小説を書くうえでの覚悟を称えます。
そして、『むき出し』のような小説は「なかなか書けない」とも。
「もっとデフォルメしてかわいらしい話にしたり、笑えるだけの話にしたりっていうことも出来たと思うんですけど」「直接作者に批判の声が届くかもしれない構図を持つ小説を、こういう形で発表すんのはすごいなぁ」と絶賛しました。
■又吉の『むき出し』解説に視聴者「もう一度読み直したくなりました」
自身の小説や小学生時代の話なども交えながら、『むき出し』の魅力を語ってくれた又吉さん。
ネット上では、「又吉さんの優しい話し方が心にしみて『むき出し』をより深く感じる事ができました」「かねちーさんこれ見たら泣いちゃうほど喜ぶと思います」「又吉さんの論評が分かり易くてもう一度読み直したくなりました」との声が上がっています。
自身も小説家である又吉さんの丁寧な解説により、多くの視聴者に『むき出し』の魅力が伝わったのではないでしょうか。
【番組情報】
ピース又吉直樹【渦】公式チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=uS0CzZPwD2c
(文:二木もなか/編:おとなカワイイwebマガジンCOCONUTS編集部)