12月27日放送の特別番組「椎名林檎 お宝アーカイブ」(NHK総合)。「NHK紅白歌合戦」など、椎名さんが過去に出演したパフォーマンス映像やミュージックビデオで、歴代の楽曲を紹介。さらに、椎名さんが自身の音楽について語ったインタビューが放送され、反響を呼んでいます。
(画像:時事)
椎名『隙間にこぼれ落ちたものを音楽でスケッチしたい』
椎名林檎「本能」
幼い頃から、ピアノなどの器楽曲に慣れ親しんできた椎名さん。「ずっと楽器のそばにいて、音の構造を頭の中で想像して、『早く楽器に触りたい!』っていう子供」だったそう。
曲作りでは、「楽器を嗜む方が増えて欲しい」との願いを込めているそうで、「まず、手っ取り早いギターとかを手に取ってくれる人が増えたらいいなぁと」と希望を口にします。
また、「私が勉強してきたことを踏まえると、器楽が活躍しているポップスを追求できるんじゃないかなって」と話しました。
椎名さんの音楽の特徴の一つは、「本能」のイントロのように、長調(メジャー)か短調(マイナー)かはっきりさせず、両方鳴っている響きが多いこと。
椎名さんは、実際にピアノを弾きながら自身の音の世界を解説します。
「単純に長調と短調って認識し辛いコードワーク。床と天井があって(その間の)"柱" に特徴があると思うんですね。隙間にこぼれ落ちてしまって、どうしようもなくて、でも後になって自分を苦しめるようなものを音楽で記録したい、スケッチしたい」と、音色に込めた繊細で緻密な想いを語りました。
椎名「くそー!やりてぇー!」セトリと"あるもの"に共通点?
楽曲だけでなく、ビジュアルセンスの美しさも一際目を引く椎名さん。
今回、番組で放送された映像にも、モダンな着物姿、妖艶なドレス姿、ポニーテールやメガネのカジュアルファッションなど、さまざまなスタイルの椎名さんが登場します。
こうしたビジュアルについて、「曲を作る時と同じ感覚ですかね。『ヒロインがこの状況で、こういう相手に対して投げかけている』っていう風に聴こえなきゃいけないとか。動きに遅れが出る素材だとビートが甘く聴こえるんじゃないかとか。髪の動きも、この曲はタイトでピッと動かない方がこの言葉(歌詞)が絶対入るからとか。キリがないですね……」と語りました。
また、音楽やコンサート創作についてのヒントを訊かれた椎名さんは、「刺激されるのは、天ぷらとか寿司とかコース。あの"セトリ"」と、料理コースのお品書きを"セットリスト"と称します。
その"セットリスト"について、「まず食欲を刺激しておきながら、すぐここを畳み掛けるんだ。そしてこれ。でもこの間に焼酎! みたいな。ああいうことが一番『くそー!やりてぇ!』ってなりますね。だから、江戸前のお料理コースを1つのフォーマットとして目指してる。"腑に落ちる"の文字通り、やっぱり体に入れるから合点がいくんでしょうね」と、自身の感性を語りました。
そして、自分の曲を聴いてもらうシーンには、通勤通学を想像することが多いという椎名さん。
「満員電車から降りて冬の空気が触れた時に、丁度リフが始まったら……とか、ドラムフィルが来たら……とか。そういうことで "ヒロイン感" を得られたり、気分がガラッと変わることがある。それをただやりたいだけだと思うんですよね」と、目指す楽曲作りを明かしました。
「椎名林檎 お宝アーカイブ」が神回と話題
椎名林檎と宇多田ヒカル「浪漫と算盤」Music Video
インタビューではこのほか、歌詞に込める想いや、他のミュージシャンとのコラボ曲についても触れ、椎名さんの音楽に向ける情熱がたっぷりと語られました。
また楽曲は、デビュー曲の「幸福論」から、「歌舞伎町の女王」「丸ノ内サディスティック」といった代表曲、「NIPPON」「神様、仏様」「長く短い祭」「罪と罰」「目抜き通り」「獣ゆく細道」、最新曲の「浪漫と算盤」まで、およそ20曲をOA。
ネット上には、「満足度高い番組だったー!」「素晴らしい番組でした。ほんとにほんとのお宝でした」「林檎嬢をわかったつもりでも もっともっと奥が深いんだな」「ツボを突きまくりのセレクトに痺れました」「さすがやなぁー 考え抜かれた音と釘付けにさせられる演出」「ひたすら拝むことしか出来なかった……」などの声が上がっています。
穏やかな口調ながら、目を輝かせて音楽愛を語った椎名さん。その魅力に一層惹かれたという方も多かったのではないでしょうか。
(文:MAIKO)