(画像:時事)
『まつもtoなかい』のことをダウンタウンど真ん中世代に語らせてください。
ファンならよく耳にしたことがある松本人志さんの格言の中に「お笑い芸人は2度売れないといけない」というものがあります。
この格言に至るまでに何十年と唯一無二の体験を繰り返し、その体感を他人にも置き換えて統計的に観察し、言語化した松本さんは、やっぱり「天才」と呼ばれるような素質だけでなく、いつも「正しく努力している」人なのだと再認識した人も多いと思います。
おそらくダウンタウンの「売れた」の「2度目」は『笑ってはいけないシリーズ』や『すべらない話』がブレイクした2000年代後半から『水曜日のダウンタウン』大ブレイクまであたりの10年間くらいのことを示しているのかなと思うのですが、いま「3度目」の土台を模索しているのが『まつもtoなかい』なのかななんて勝手に考えながら、いまも松本さんから目が離せないダウンタウンど真ん中世代のいち視聴者です。
松ちゃんと中居くん(ファンのままの気持ちであえてそう記載させていただきます)が仲良い。
これは、我々世代にとっては本当に奇跡のような話で、ツーショットはいつも胸熱です。
ドラマ『伝説の教師』の共演でお二人は出会ったわけですが、『伝説の教師』前のダウンタウンはかつて、要らない番組に『夢がMORIMORI』を挙げたり(放送ではピー音で消されていたくらいNG発言)、バラエティーのノリをやるジャニーズタレントに好意的ではなかったりした時代がありました。
お笑いファンもそこに同調して、ジャニーズタレントがちょっと面白い事を言おうとするだけで「にわか」だの「芸人気取り」だの揶揄してボコる時代だったと記憶しています。
それでも挫けずにバラエティ番組で生きていく強い姿勢を見せていたのがSMAPの中居くんで、『笑っていいとも!』でのタモリさんへのあしらい方やファンサービスを省いてシュールな笑いを生み出そうとするコメントなどがじわじわ視聴者の心を掴んでいってた場面を何度も見てきました。
松ちゃん好きだった私は、『伝説の教師』の共演が発表された当時、出来れば中居くんとは仲良くしてほしくなかった気持ちがあり、それは特段珍しい感情でもなかった気がします。
だって今まで「ジャニーズの笑い=寒い」みたいな姿勢をとってきたお笑いファンにとって、それは天変地異になり得るから。
でも、逆に中居くんと急激に仲良くなるんじゃないかという予感もしていました。
ファンならご存知だと思うのですが、松ちゃんってあんまり人を嫌わないんですよね。
いつも情をかけてくれるし、決して追い詰めたり人格を否定したりしない。
意外と紳士的なんです。
だけど、私が予想していた以上に、2人は一瞬で腹の底から何かを共有したようでした。
ドラマはアドリブシーンが多かったのですが、そこでのやり合いで松ちゃんは中居くんの勘の良さに気づき、ドラマスタート時こそ緊張感がありましたが回数が進むにつれて2人の掛け合いには安定感がありました。
中居くんがバキバキに仕上げてこなかった感じがやっぱり新しかった。
俳優でもないアイドルでもない、バラエティMCでもない「中居くん」にしか出来ない立ち位置で松ちゃんのボケを捌いていった風景は、見た事ない漫才のジャンルといった感じでした。
いま思うと、中居くんのあの立ち位置は「ヤンキーっぽいリーダー格の視聴者が乱入してきてる感じ」がテーマだったのかな。
中居くんの普通っぽさや視聴者との距離を離さない立ち位置が見事に機能していました。
そんなわけで、このお二人が仲良しになったことは、吉本興業とジャニーズ事務所の和解並みの「ロミオとジュリエット」並みのインパクトある出来事だったわけです。
それは、なんというかお笑い界で猛威をふるっていたダウンタウンの言うことは「絶対」だった私たちにとって、SMAPのコントも笑いも「認めろ」お笑いやりたがるアイドルも「認めろ」という提示かのようで、実際「松ちゃん=神」の私はもちろん手のひら返しクルーでした。
でも、それが嫌な気持ちしなかったのは、松ちゃんがまたテレビの中の「面白い」を広げてくれた感じがしたんです。
だから、時代を動かしたこのお二人が『まつもtoなかい』に意気込んでいると聞いて、また何か時代が変わる?何かが起こる?とワクワクはしました。
で、実際番組の内容は凄まじく濃いものがあるし、毎週「勉強になるなぁ」と感じます。
でも、本当「ごめん」って気持ちなんだけど、もう子育てとかしてる世代だからそんな落ち着いて見たい番組見る時間ないんだよね。
ほんと、しょぼい理由で申し訳ないんだけど。
ど真ん中世代って、多分何かしらの事情でテレビをしっかり見ることが出来ない人は多いんじゃないかな。
年だから「眠い」とかもあるしね。
あと、これが一番思ったことなんだけど、「次の日に友達と、この番組のことで盛り上がれたらどんなに楽しいだろうな。もうあの頃と同じじゃないんだよね」という虚しさ。
これは本当に松ちゃんと中居くんのせいじゃないの。
ど真ん中世代はさ、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』とか『SMAP×SMAP』とかリアルタイムで見て、翌日は学校の教室でそのネタで盛り上がってさ、1週間ずっと「これをこうしてこうしてドーン!」って言ったり「MCカマー」やったりしてたわけ。
だから、『まつもtoなかい』見た後に面白かったなぁという感想とともに「会社に同じようにお笑い好きで気が合う人がいたら、どんなに楽しいだろうな」とか「あの頃みたいになりたいな」とか…かえって虚しくなっちゃう。
次の日にキャッキャしたり、お笑い好きの友人とずっと「あのシーンの面白さ」について語ったり、もう出来ないんだなって痛感して辛いのよ。
『まつもtoなかい』は、もう教養かのような姿勢で見てるんですよね。
なんか、それがちょっとだけ「わたし、年取ったなぁ」って、妙なセンチメンタルを感じる日曜夜になってます。
『まつもtoなかい』の視聴率がそこまでじゃないみたいな話も見聞きするのですが、これは視聴率そのものに挑戦しているわけではなく、第三回目の「売れる」ための布石なんで、そこはファンなら皆んな分かってついてきてるので大丈夫です!
そして、その第三回目の「売れる」が、私たちど真ん中世代にとっての何度目かの青春になることと思います。
長文失礼いたしました。
※掲載内容は個人の感想です。
(文:ムニ・エル/編:おとなカワイイwebマガジンCOCONUTS編集部)