シャネル・ネクサス・ホールでは、1月16日から2月14日までスペイン出身の画家アントニ タウレの展覧会を開催いたします。数々のアーティストから愛され、世界各地の劇場で舞台装飾も手がけてきた比類なき画家の日本初の個展です。
L’ Énigme, 2016 © Antoni Taulé
バルセロナで建築家資格を取得した後、絵画、写真、舞台装飾の制作にとりかかかり、世界中の美術館やギャラリーで数々の個展、グループ展を開催してきたタウレが、今回取り組むのは「光の島」というテーマです。
どの作品も、開口部から差し込む外の光と冷たい室内空間の暗さが幻想的なコントラストを生み出しています。描かれている光は決して一様ではなく、繊細なニュアンスに富んでいます。「光の島」はタウレが1970年代から拠点の一つとしているスペインのフォルメンテーラ島を描いたものです。地中海西部、イビサ島のすぐそばに位置するこの島は、豊かな自然と絶景によって多くの人々を魅了する楽園であり、タウレのインスピレーションの源であり続けています。「光の島」はタウレが愛する現実の島であると同時に、もう一つの現実ともいうべき夢や幻想の空間だといえるでしょう。
Mnémosyne, 2012 © Antoni Taulé
Quatre collonnes, 2017 © Antoni Taulé
Carrelage, 1999 © Antoni Taulé
Pour un oui ou pour un non, 1985 © Antoni Taulé
展示作品は大きく二つのタイプに分類できます。
一つは最近の絵画作品であり、もう一つは過去の写真の上に絵を描いた作品です。いずれのタイプの作品においても、光と闇、現実と虚構、存在と非存在、色彩と無彩色、無限と有限の境界がひとつの空間のなかに見事に描き出されています。ほとんどの作品において人物は不在であり、何かが起こった後、あるいは、これから何かが起こるかのような、不安と期待に満ちた空間が立ち現れているのです。
写真と絵画のミクストメディアの作品は、タウレの芸術において現実と幻想、現実と表象がつねに隣接し、浸透しあっていることを端的に示しています。写真は確かに存在した過去の断片ですが、それを彩色し再構成することで過去が現在に蘇ることになります。写真と絵画が相互に干渉するタウレの作品は、過去と現在とが浸透しながら独特のオーラを放っています。
「光の島」を訪れる鑑賞者はその独特のオーラに包まれ不思議な感覚を覚えることになるでしょう。
アントニ タウレ Antoni Taulé
1945年スペイン、バルセロナ県のサバデル生まれ。
父親から手ほどきを受け、幼少の頃から絵を描き始めた。1970年バルセロナで建築家資格を取得。1975年にパリのギャラリー・マチアス・フェルで初個展を開催して以来、世界各地の美術館やギャラリーで数々の個展を開催し、グループ展に参加。ゴヤ美術館(フランス、カストル、1986年)、ヴィラ・タマリス(フランス、セーヌ=シュル=メール、2006年)、ヴィラ・カサス財団(スペイン、バルセロナ、2010年)で回顧展が開催された。1983年フランスの芸術文化勲章を受賞。一方で、世界の名だたる劇場で舞台美術を手がけてきた。1970年からスペインのフォルメンテーラ島とロンドン、パリを拠点に活動。
INFORMATION
会期:2019年1月16日(水)~2月14日(木) (入場無料・会期中無休)
時間:12:00~19:30
会場:シャネル・ネクサス・ホール (中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
URL:https://chanelnexushall.jp/program/2019/antonitaule/